【ちうめせん】第1節 VS 甲府商業戦マッチレポート

元なでしこリーガーの伊藤千梅が自らの視点で描くマッチレポート「ちうめせん」。
山梨県女子サッカー1部リーグ第1節の甲府商業戦のマッチレポートを描いてくれました。
文章:伊藤千梅より

グラウンドに着くと春にしては少し冷たい山梨の風が、私を出迎えてくれた。

2時間前に会場入りをしているサポーターさんたち。
新参者に声をかけてくれるそのアットホームさに驚く。

7.工藤麻未選手とのコラボ弁当を購入したお揃いの紙袋で、観客席が埋まる。

県リーグで見たことがない、バナーの数。
県リーグで見たことがない、観客数。
そんな中、FCふじざくら山梨の2021シーズンが幕を開けた。

整列時、8.田中里穂選手が先頭に立つ。
纏う空気にヒリヒリとした緊張感を感じる。
その歳で、チームを背負ってピッチに立つその重圧は、想像よりも重たい。

サイドからの攻撃で試合が始まる。

2得点目。右サイド、南條選手のドリブルに思わず「いける!」と声が出た。
そこで南條選手が選んだのは、確実にシュートコースのある10.清水千陽選手へのパス。

落ち着いて確実に決める。

“私が、点を決めたい”
前線としては当たり前の気持ち。

でも、それ以上に

“チームの得点”
への執着がみえた。

その上で、本人は言う。
「最近はパスばかりなのが課題」

目で見たもので確実な判断をするのは難しい。

それでも、南條選手は相手の裏をかき続ける。


8-0で前半を折り返す。
外からは悪くない流れに見えたが
ベンチでは監督の檄が飛んでいた。

“ミスに捉われていないか。揺らいでいないか”

マッチデーに書かれるその言葉を
今一度問いかけられる時間。

菅野さんの求めるものは、高い。

そして迎えた後半。
初っ端から、12.風間優華選手の声が響く。

前半から安定感のあるDF陣。
3.松岡沙由里選手、5.高山紗希選手の展開のスピードはさらにあがる。

ラストの得点。
何かから解放されたようなキャプテン、田中選手の裏へのボールから
工藤選手が走り込み優しいパス、16.辻野友実子選手のキーパーの逆をつくゴール。

辻野選手は、本日7得点の活躍。

その理由に”そこにいること”が挙げられる。

華々しい結果の裏には、必ずゴールの前に走り込む走力があり、地道な積み重ねがあった。


試合終了。スコアは12-0。

結果だけを見るならば、文句のつけようがない。

それでも、選手は満足しない。

プロセスは完璧だったのか。これまでやってきたことは出せたのか。

現状で良しとしない姿勢に、次は何が見られるのだろうかと胸が高鳴る。

多くの人に応援される理由は、ここにある。

富士山の頂に、辿り着くその日まで。

戦い続けるこのチームを
私は見つめ続けたい。